2013年7月31日水曜日

上流社会というやつは……

日本から戻り、向こうでお世話になった方々への御礼メールもせずに、読書に耽っています。

水村美苗さんという作家の「本格小説」という本です。水村さんは、帰国子女の先輩だと聞いて、どのような小説を書かれるのだろう、と、ふと手に取った本でした。



運命の出会い、というのは大げさですが、読み終えた今、会うべきして出会った本だと思いました。

本の冒頭は、水村さんの、米国での経験、その後ご家族が経験する小さな悲劇などが私小説が如く語られます。この部分には、私の昔が重なるところがあり、何て似ているの!とドギマギしながら読みました。

その後は、幼馴染の「よう子」と太郎の絆、後によう子の夫である雅之が加わった3人の愛を中心に、上流階級の家のサガを同家に仕える女中、フミさんが語ります。

上流階級に属する美人3姉妹が、時代を経て、3バァサンになっていく。読んでいると笑っちゃうほど上から目線の3姉妹は若い時分からバアサンになってもアクの強く、いい意味でも悪い意味でも光っています。
その光が、娘たちの世代、そして孫たちの世代(現代の若者)になるにつれ、どんどん凡庸ぼんやりしたものになっていく。
「時代が悪いのよ」
「軽薄というよりは希薄」
といったセリフたちに、帰省するたびに感じていた胸やけをドンピシャリと言葉にしてもらったようなスッキリ感がある。

そして、これは夫の妹たちに対して、私が思っていたことでもあったりして。
小川けんいち氏に描いていただいた「伯爵夫人」像、いいでしょう?

夫は旧家の出身でして、義母はかなり上から目線の人です。幸か不幸か、夫は8歳からずっと寄宿舎に入れられていたので、常識的に育っていますが、妹たちは上流意識を持つ親に甘やかされて育った部分があります。その上、フランス人形のような美人姉妹。こうなったら蝶よ花よってなもんで、結婚前は社交界の華だったそうです。
私が出会ったころは、彼女たちは結婚していたもののまだ20代で、自然体でもきれいだし、言動一つ一つが、ハッとするほどに魅力的でした。
それが、歳と共に、職場でフツーの人たちとの小競り合いに参加したり、思い通りにならないことがあったり、というフツーの大人の生活をしているうちに、アレよアレよという間に光が消えてしまったのです。

「もっとエレガンスのある大人になると思っていた」とつぶやいたのは誰だっけ。でも多分、義母を含め、多くの人が心の中でこう思っていることでしょう。
この小説の中でも、期待の孫がどんどん普通のつまらない女になっていくという下りがあって、ふんふん、と読み進みました。

また、この小説が、女中さんの目を通しているところも、ワタシ的には共感するところ多し。
なんかね、やっぱり身勝手というか、自分たちの流儀を「アナタ、知らないでしょう、クスッ」と笑うような残酷さがあるんですよ、上流階級意識のある人たちって。その上、アータ、傲慢なフランス人の中の一東洋人ですからね、アタシときたら。
私も昔の女中さんと同じで、これを受け入れるしかない立場にあるから、流して流して、分をわきまえているというジェスチャーをしながらやってくしかないからね。

その他、よう子とたろちゃんの「ソウルメイト」な言葉のやり取りなどもたまらない。ふと婚活に走る我が日本の女性達よ、こういう狂おしいまでな愛を目指すこと!今更、安定とか、バイオロジカル・クロックが、とかいう不毛な計算などしちゃダメ! とお節介したくなる。

これから「お好きな本は?」と聞かれたら必ずこの本が5本の指に入るだろう、と言うくらい大切な出会いでした。

……ところで、こんな完成度高い「本格」文芸作品の紹介のあとで、おこがましいのですが、ワタクシ目、ニュースダイジェストという、フリーペーパーのウエブサイトにて、「伯爵夫人のマナーブック」というコラムを連載させていただくことになりました。



前述の義母から学んだことなどをフィクションかけて皆さんとシェアしたく、(決して愚痴のはけ口ではありませんよ~)、お時間があるときなどに、お目を通していただけるとありがたいのですが……。
北海道にお住まいのイラストレーター、小川けんいち画伯に、ウィットの利いたイラストを描いていただいています。毎月第2、第4月曜日に更新される予定です。
どうぞよろしくお願いいたしますです。





2013年7月26日金曜日

無事着きました!


昨日の13時30分、無事にパリに着きました。 

最終日24日は、高輪のホテルをチェックアウトし、午前中に一度羽田空港に荷物を置きに行き、その後、母とお昼を食べて別れ、その足でディズニーランドにに行き、友達母子と無事合流の後、雨の中、閉園間際まで遊び、深夜羽田に戻りました。そしてバカみたいに食料品が詰まった重い重いスーツケースを無事チェックインし、まずはドバイまで飛んだでしょ。これが10時間のフライトでした。そして、早朝のドバイ、あの巨大な空港にてミニマム・コネクティングタイムの乗り継ぎを無事にこなし、パリに着いたのです!こちらは6時間33分のフライト。荷物も無事出てきたし、子猿・母猿みんな元気だったという、奇跡のような行脚をこなした母猿子猿。

神様、感謝です。事故もなく無事に守ってくださってありがとうございます。

昨日は午後4時頃に母猿がバタッと、噂によるとその1時間後にチビ猿が、そのさらに2時間後に兄猿がベッドになだれ込み、かわいそうな父親は、独りさびしくパスタとゆで卵を食べたらしいです。

それにしても25日間、楽しかった~! 
日本でお会いできた方々、貴重なお時間をありがとうございました。お会いできて良かった!
今回会えなかった方々、残念です!でも次回お目にかかるのことを心の励みにします。

滞在中、母猿は、時折不安というか、一人で子猿たちを守ることや、日本なんだけど外国とでも言うか、気持ち悪い根無し草感覚に襲われたりしましたが、これも毎度のこと。良い経験です。普段の凡庸なる我が精神に小気味良い、カツを入れてもらっているというか。 

子猿たちはといえば、まず兄猿。24日の朝、窓の外を観ながら「あ~ぁ、今日は日本最後の日だね。もっと長くいたかったなぁ」って。 
ちび猿はと言えば、「パパがいるからパリが好き。でも日本にパパもいれば日本の方が好き」……だって。 

まっ、住んでみると色々あるんだけどさ、日本も。 
でも嬉しいです。帰省の目的は、子猿に日本を知ってもらうこと、そしてできれば好きになってもらうこと、です。この二人のつぶやきで母猿の苦労も報われました。 

今日からフランスでバカンスです。明日、いや来週からかな、子猿たちに勉強癖をつけるべく、朝勉させるつもりです。

また行きま~す!

2013年7月18日木曜日

夏休みカウントダウン!

ちび猿は相撲がお気に召したよう……
日本に来て3週間が経とうとしています。
早かったような、長かったような。

今までは、日本に帰れば心に影を差すようなこともあったり、夫が来るときは国内旅行も付けなくちゃ、で「やっつけるぞ~」という意気込みで乗り込んできたけれど、今年は純粋に子猿たちの体験入学が唯一のTo do list。夫が出張でやってくるというサプライズがあったり、旧友たちとも会えたし、みんな元気だったし、とても楽しい帰省です。

今更ですが、友達っていいですね。
近年、内向的になりつつある私だったので、帰省中は子猿たちを学校に通わせて、私は家で読書か物書きでもしてよっと、と思っていました。が、予想以上に多くの心許せる旧友たちに会う機会に恵まれ、そしてこんなに楽しく時間を共有できて、人と会うのってこんなに楽しかったっけ?とあらためて発見している感ありです。

さて、子猿たちですが、体験入学、今日が大掃除、明日が終業式で、その後は100%夏休み。
早生まれのちび猿は日本で小学生デビューをしたのですが、兄猿がやっているような計算や音読をすること、そして、やってみたらできた!ということがプライドをくすぐったようで、すこぶる快調。

兄猿は、小学校2年目で、楽しいことは楽しいけれど、相変らず一匹オオカミ、もしくは謎の風来坊って感じです。
淡々としている海色の瞳の奥で何を想っているのかしら。
風邪気味でいつもの食欲はなく、一方でまた背が伸びたようで、ますますヒョロッとしてきた兄猿。
……少年たち、あっという間にママの手を離れていくものなのでしょうね。

実は昨日あたりから、パリのうちへのホームシックが始まった母猿ですが、週末以降は、更なる再会がたくさん待っていますし、日本を満喫して元気に帰ろう哉♪

2013年7月10日水曜日

横浜ロマン




現在、豪華客船にてクルーズ中です。たまには贅沢もしなくちゃね。
海風の気持ちいいこと!

これが私の客室です。レトロでいいでしょう?




……なんてバレバレですかね。



日本が誇る、氷川丸を見学したときの客室の写真です。

とても素敵な船なのね、氷川丸。
クルーズ=船酔いとしか連想できない私なのに、太平洋に出てみたくなるほど。

というわけで、先週末はひさびさに横浜に行ってきました。


夫も合流したので、男子3人が大好きな船三昧のコースをたて、梅雨明け初日の炎天下の中、母猿がんばりました。


まずは、帆船日本丸。


1930年に作られ50年余りもの間活躍したそう。木造のデッキ、マストの美しいこと。

船内も、規律とロマンを感じるシンプルビューティー。キィキィという足音をたてながら見学していると、船乗りたちの声が聴こえそうなの。付き合いのはずが早くも船舶オタクと化する母猿です。

このあと赤レンガ倉庫に向かい、海上保安庁の船を見て、その雄姿に清々しい気持ちになり、


その足で横浜クルーズへ。

本牧ふ頭の方まで行き、横浜港の大きさを再認識したり、
大桟橋の様変わりに驚いたり。……90年頃に大桟橋に停泊していたクイーン・エリザベス2号でバイトをしていたことが思い出されました。あのころ一緒にバイトしていたあの人、あの彼、あのコたち、みんなどうしているのかな。


下船した足で、わが青春の山下公園を通り、

いざ中華街へ!

中国にいたことがある夫は、他の国の中華料理に納得したことがありません。そのたびに「いつか横浜の中華街に連れてってギャフンと言わせるぞ」と思っていました。

私も多くの国の中華街に行ったことがありますが、横浜中華街のレベルは世界1,2を争うと思うのです。

結果は、合格~!


四川風のソースは、辛いだけでなく、麻の実のこう、すーっとする香りがなくてはならないそうですが、ばっちりだったよう。

ポルトガルから伝来したのでしょうか。夫が試そうって。
エッグタルトと兄猿の好物ゴマ団子も買い食い。
夏バテ知らずです、男子組
また街並みも興味深かったみたいで、たくさん写真を撮っていました。でもわかる。脇道など、こんなに中華中華って並べ立てていても、決して中国ではない、「横浜の中華街」なのよね。

そして最後の〆は冒頭の氷川丸でした。


折しも、浅田次郎氏の「シェエラザード」を読んでいるところ。

阿波丸の悲劇という史実に基づいたフィクションです。
阿波丸(小説では弥勒丸)も、氷川丸も、客船として作られたけれど、戦時中は、食料を運んだり、怪我した軍人を収容する病院船として活躍したそうです。そして氷川丸だけが、戦争を生き抜いたという……。色々見たんだろうな、この船さん。
気分はCapitaine Haddock
船内は、30年代のちょっとノスタルジックなデザインでまさに好み。デッキから見える景色も青々として爽快で、「クルーズしたくなる? 」と夫に聞くと、
「ファーストクラスならね」
だって。

1854年に黒船が来たとき、欧米はもっと開けている神奈川港の開港を望んでいたけれど、日本は横浜を推して、当時は何にもない漁村だった横浜を短期間で「街」に作り替え、欧米を納得させたらしいです。そして繁栄するも、その約60年後に、関東大震災で全てが流された。そして、復興……。


近代化を迫られ、街を作っては地震に流され、また復興する。これが日本の「さだめ」なのでしょうか。


私の知っている横浜とは殆どが様変わりしていたけれど、どんどん進化する、というのがこの街のさだめだと思えば、「いけいけ! 」とハッパかけるしかないわ。


……と思っていたら、気付かぬ間に、夫がニューイングランドホテルの写真を撮っていました。

誰の目から見ても美しいんですね、やっぱり。

古き良き横浜も残っていて、ほっとする母猿でした。




2013年7月4日木曜日

公園での出会い

日本に着いて5日目、時差ボケがある日とない日が交互に来ています。

子猿たちは2日から地元の学校にて体験入学をさせて頂いています。フランスではこのような受け入れ体制がないらしいです。私のような立場の親、そして子供にとっては本当にありがたい制度。
この体験より、彼らが日本の情緒を感じ取ってくれるといいな、と願っています。

日本の児童は、フランスの学校と違い付添なしで通学しますが、昨年の体験入学で、兄猿はこれがとっても気にいたよう。チビ猿も羨ましかったようで、初日迎えに行った日にゃ、私の姿を確認したのにもかかわらず、前を素通りされました。
最近は子供を刃物で傷つけるというおぞましい事件が連発しているし、母猿はフランス式に慣れているので、ハラハラ。

昨日の放課後は裏の公園に行きました。
この公園の角には、駄菓子やかき氷を売るお店があって、子猿たちはパリを発つ前からそこで何か買ってもらえるのを楽しみにしていました。
……ということで初ラムネ。
可愛いデザインね!
昨年は、子供たちが同伴されずに1人で公園に来ることに驚いたものですが、今年は親御さんの姿もちらほら。フランス式に慣れている私としては、この様子にほっとしました。

この公園は広々としていて昭和の香りのする素敵な公園なのですが、一方、無防備な感じがします。
背の高いジャングルジムがあったり、木登りしている子もいます。
ブランコも、ま、これは子供たちの使い方なのですが、激しいこと!何回「落ちる!!」と心臓が止まったか。周りの子供たちも、平気でブランコすれすれのところを通るし。フランスだと、まず保護者がいるから、そんな激しい乗り方が放置されることは少ないし、そもそもブランコがある公園が少ない。
またフランスの公園では遊具の周辺はスポンジ状の床素材や大きめのおが屑を敷いています。

さて、心配しながら子猿たちを見張っていると、
「フランスから来られた方ですか」
と声を掛けられました。
チビ猿のクラスメートのおばあ様とのこと。高齢ママが多いフランスの感覚で居たのでお母様だと思いました。
知的な語り口で、地域のことなど教えてくださりました。
そして公園についても教えて頂きました。殆どの公園では木登りは禁止されていなく、危ない体験の中で体得してもらう、というスタンスでいること、小学生以降は、公園にも1人で来てもいいこととされているなどなど。

なるほどなるほど。
でも勇気がいるなぁ。正直、フランス式の方がいいな、と思います。日本の場合は、誘拐などの犯罪だけでなく、天災もあるし、小さな路地でも車の往来が多いし。過保護かしらね、私。
風に飛ばされたのか、公園のアジサイが沢山落ちているのを
兄猿が拾ってくれました。
そんな意見交換をしながら、ご自身のお仕事、シニア・ライフ・アドバイザーについても教えてくださりました。認知症防止のコツや、断捨利というのでしたっけ、身の回りの整頓の大切さ、また、どうやって死にたいか、などを記すエンディングノートについての啓蒙など、とても興味深い話でした。

夜、母にこのことを話すと、最近、母の友人らで集まると、こういう話ばかりだそうです。「ちょっと前までは無関心だったのに、近い人が亡くなると急に他人事じゃなくなってね」 

いいことだな、と思いました。
私もこの世を去るときは、人に迷惑かけたくないし、また、無駄な延命処置や返って痛みを増大させるような滋養強壮などはやって欲しくない。できるだけ自然な形で自然に帰りたいものね。
同様に、親などを見送るときは親の望む形で死なせてあげたい。それが本人の手によって文書化されていると、医療関係者などに対しても、説明し易いですものね。

最後に、公園の方は「一日一回は大笑いすること、これがボケ防止のポイントよ」
とのこと。

素敵な出会いでした。



2013年7月1日月曜日

着いた着いた!

パリの土曜日の15時過ぎに飛び立ち、日本時間の日曜の夕方5時過ぎに到着しました。
エミレーツ航空での約20時間の旅。どんなものなのかすごーく緊張して挑みましたが、感想としては意外と快適でした!

昔、ANAで客室乗務員していた頃、痛感したのは「人間10時間までの飛行は楽しめるけれど、13時間越えはマズイ」というものでした。これはお客様を見てて思ったことです。冬場のNY路線の帰りなど、11時間を越えた辺りからから、もう皆さん呆けた顔になってて、よくない!と思ったものです。

それが、今回は、パリ→ドバイが6、7時間、ドバイ→成田が9時間で、間に2時間40分ほどの待ち時間がある、それも真夜中に……。そして未知のエアライン、エミレーツです。

でも、エミレーツ、すごく良かった。何がって、すごく子供フレンドリーなのです。
Ck in時から座席などを子供のために配慮したり、搭乗も早くしてくれたり…。
そしてプレゼントもすごい豪華!


これは大人にも。靴下と歯ブラシと目隠し。
今のご時世にエコノミークラスにこの配慮ができるのは
さすが、アラブ首長国連邦!

チャイルドミールもこんなおまけつきです。
これはお弁当箱に超便利な予感です。
豪華でしょう?
またエアバス380も初体験。パイロットの腕も良かったのかもしれないけれど、安定感があっていい飛行機ですね。尾翼にカメラがあるのもすごいいい!これを見ているだけでエンタメですが、さらに1200チャンネルもあるテレビもいい。子供番組が充実していて、ほんとにありがたや~でした。

そして、最後の感激は、これ!
客室乗務員さんがポラロイドで記念写真を撮ってくれて、こんな額に入れてくれるのです。
いい思い出になります。ありがとうございます。
カードは去年のオーストリア航空でもらった
飛行機カード。これも子猿たちの宝物となっています。
エミレーツべた褒めになってしまいましたが、別に回し者ではありません。

もしかして今回だけ、運がよかったのかもしれないし。

とにもかくにも、こんな素敵な(かつ格安な)旅路を紹介してくださったVoyage a la carteさん、
どうもありがとうございます。

さて、一週間が始まりました。母猿がんばります!
どうぞ良い月曜日を~!