2012年3月22日木曜日

サロン・ド・リーブルと大江健三郎

先日の日曜日にはサロン・ド・リーブル、パリ書籍展に行ってまいりました。
まずはこのポスター観てください。素敵ではありませんか!

本から飛び立つ自由な思想
この夕方には大江健三郎氏が講演すると聴いていたので随分前からそれを楽しみにしてきましたが、現実的なロジスティックを考えると、どうなるのだろうと危ぶんではおりました。

日曜ってことは子猿達がいる。夫に任せようと思ったけれど、夫は最近出版したし、私よりもこの書籍展に行くべき人。

SFのS(サイエンス)を取り外したような短編集。
幽霊あり、宇宙的でもあり、哲学的でもあり、ヒマラヤあり……って説明が下手ですね
では一緒に行くか、と出発したのがお昼です。「あの~私が行きたいのは夕方なんですけど」と言いたくもあり、でもまぁ、今の私は家族優先のフェーズだし、成り行きに任せました。

すみません、Salon de Livreのサイトから写真を拝借しています
会場に着くと、既に人、人、人。
こんなに皆本が好きなんだ、と本好きの一人として嬉しくなり。
今回は震災発生1年ということで、日本から20名余りの小説家・漫画家が招待されていました。確かに、震災を受けて、発信する側にいる人たちは、あの時を、現状をどのように受け止めているか、知りたいところ。
この視点、すごいイケてるなフランスって、と思いました。

夫は何社かの出版社と話したけれど、このサロン、昔とちがって書く人と出版社を繋ぐという機会ではなくなっていてあまりピンと来なかったようです。今はいかに売るか、これが焦点。セチがない世の中になりました。そうそう昔はグラン・パレで開かれていたそうですよ。素敵だったろうな。今は味気ないだった広い会場。

まぁ、それでも、各出版社お抱えの小説家・漫画家を呼んでトークショーやらサイン会やらでアピールしていて、そのために並んでいるファン達のウキウキ感が伝わってきて良かった。


ところで日本では書籍展ってあるのでしょうか。絶対あるべき。小説家の人となりを知りたい!今、何を想っているか知りたい!小説ではない生の声を聴きたいって思うのは私だけじゃないはず。出版社の皆様、本への興味度(≒売り上げ)上がりますよ~。


さてパパが出版社と話している間、子猿達は紙芝居を初体験。

あらためて聴く舌切り雀は恐ろしい話でしたわ
そして2時には「帰ろう」コールが挙がったのでトラムに乗って帰りましたとさ。

そう、大江氏の講演は諦めたのです。

実は「大江、大江」といえるほど、読み込んでいるわけでもなく、一部の小説は私には難解だったりグロテスク過ぎてダメなのですが、それをもひっくるめて、彼には静かで力強いエネルギーを感じていて、とても興味ある作家なのです。

また、私が在学中、母校にて「信仰なき者の祈り」というタイトルの講演をされたそうで、その内容は、すみません、サボったので知らないのですが、このタイトル、今色々考えさせられます。
例えば、今回の震災のような未曾有の事態において、日本といえば殆どが無宗教でしょう、それでも沢山の人が心から祈ったと思うのです。この祈りとは何だろう。誰に祈っているのでしょう。こういう、神を信じない人でも祈らずにいられない、この気持・祈りこそが真実なのではないか、などと考えてしまうのです。
この講演を、きっと時給800円とかのバイトが為に聴かなかった20+年前の自分の愚かさ。

このリベンジという意味でも今回の講演は聴きたかった~、とツィッターでぼやいていたら、ある方よりテレビでのトークショーのリンクを教えていただきました。35分過ぎた辺りから大江氏が話します。
伝えたいことが沢山あるが、TVには時間枠ってものがあって、その中でまとめられない想いを伝えたい大江氏の不器用さ。そこにも人間らしさを感じます。

私の低レベルなフランス語力で彼の言っていることをまとめれば、
・原爆を四国の森の中から見た衝撃は忘れられない。
・広島、もう原爆は終わっている思っていたけれど今だに放射能の後遺症に苦しんでいる人達がいる。福島での問題も40年後に露呈するだろう。
・日本という国は神を中心に作られた。私は四国の森の中で育ったからそういう神秘的な空気を感じ、それが私の日本であった。息子は精神障害をもちながら作曲をしている。彼の音楽を聞くと、「森の音楽」を感じる。これが僕の思う日本である。(ものすごく主観的な訳です)

原発反対、再稼動反対についての彼の意見には賛否両論だとは思いますが、私は賛成です。
じゃ、日本経済どうする?というのには答がありませんが、日本人の可能性を信じています。賢い日本人なら代替エネルギー見つけられるんじゃないか。省エネでも何かを作り出す手法を発明するんじゃないか。シンプルに生きるところから生活の美学を生み出すのではないか。

熱くなったところで、〆はやっぱり桑田さんかな。明日へのマーチ♪

よい一日を!